toraの日記

Status: Compiling Data (Philosophy)...

ジョーと論理学

2chでは以下のコピペが使われることがある。

論理学 ジョーは酒場で論理学の教授と知り合った。 「論理学ってのはどういったもんですか?」 「やって見せましょうか。お宅には芝刈機があります?」 「ありますよ」 「ということは、広い庭があるわけですね?」 「その通り!うちには広い庭があります」 「ということは、一戸建てですね?」 「その通り!一戸建てです」 「ということは、ご家族がいますね?」 「その通り!妻と2人の子供がいます」 「ということは、あなたはホモではないですね?」 「その通り!ホモじゃありません」 「つまりこれが論理学ですよ」 「なるほど!」 深く感心したジョーは、翌日友人のスティーブに言った。 「論理学を教えてやろう。君の家には芝刈機があるか?」 「いや。ないよ」 「ということは、君はホモだな!!」

このコピペの解説がどれもこれもおかしいのでちゃんと解説しようと思う。解説してる人たち、絶対に論理学やったことないだろ。 論理学には仮定のオペレーターというのがある。フランスだと→ という記号が使われることが多いらしい。それで、P→Qは if P then Qという仮定文になる。

論理学はtruth value(真理値)というものを示す言語であって、フォーミュラPや文P→QにはTrueとFalseのどちらかの価値が与えられる。論理言語を元に作られているPCの電気信号でいう1と0である。 で、このコピペを記号で表していこう。

芝刈り機がある→広い庭がある 広い庭がある→一戸建てである 一戸建てである→家族がいる 家族がいる→妻と2人の子供がいる 妻と2人の子供がいる→ホモではない

となる。この文のセットは以下の文と同じ真理価値を持つ。

芝刈り機がある→ホモではない

そこら辺の解説では

ジョーは 芝刈り機がある=ホモではない 芝刈り機がない=ホモである と勘違いした

とかかれているが、これは間違い。→という記号で表さないと真理値が全然違うものになる。 P→Qという文章は、PがQに対する十分条件であり、QがPに対する必要条件である。真理値のテーブルを作るとわかりやすいが、今回はそこまで論理学をするつもりはないので割愛。

P→Qという文がTrueであれば、PがTrueの時にQがTrueになる(conditional)。一方、P→Qという文がFalseであれば、PがTrueの時にQがFalseになる(negated conditional)。 Pの時は絶対にQが出てくるが、Qの時はPが出てこない場合があるという感じ。だから、例えばR→Qという文が書かれていないが実はどこかにあって、RがQを成立させている場合がありえる。その場合はPがFalseでもQがTrueになることもある。 そして、

芝刈り機がある→ホモではない

と同じ真理価値の文章は

ホモである→芝刈り機がない

なのだ。対偶(contraposition)というらしい。これは

芝刈り機がない→ホモである

と全く違う真理価値を持つ文章だ。十分条件と必要条件がひっくり返っている。

ジョーはこの辺りの対偶関係を間違えたということになる。 個人的にこのコピペの笑いどころは論理学の教授がジョーに論理学を教えなかったというところにあると思っている。まあ、多分書いてる本人が論理学分かってなかったんだろうって気もしなくはない。